稲城市特別職報酬答申議会 答申

2002年12月25日

1.はじめに

 本審議会は平成14年10月30日、市長から稲城市特別職報酬等審議会条例の規定に基づき、市議会議員の報酬の額並びに常勤の特別職(市長、助役及び収入役)と稲城市教育委員会教育長の給料の額について意見を求めたい旨の諮問を受けた。
 稲城市では、デフレ不況下で依然として先の見えない厳しい杜会経済状況の中、二年目を迎えた第三次長期総合計画を基本とし、行政改革の推進や基金などにより財源確保に努め、一方では加速しつつある少子・高齢化杜会への施策や環境対策、土地区画整理事業などに取り組んでいる。
 しかしながら、景気の低迷の影響により、市財政の基幹となる市税収入の伸びは期待できず、また、固定資産税について総務省の見通しでは、地価の下落を反映し来年度多額な減収が見込まれるなど、さらに財政の悪化が危惧されるところである。
 このような状況の中で、市議会議員の報酬の額及び市長等の給料の額について諮問がなされた。

2.審議会の基本的考え方

 市議会議員は、市の意思を決定する最高議決機関の構成員であり、市長は行政運営の最高責任者である。また、助役、収入役、教育長(教育委員)は議会の同意のもとに任命され、それぞれ重要な職責を担っている。(以下、議員及び市長以下三役と教育長を「特別職等」という)
 近時、議会と行政は市政運営の車の両輪として、一段と厳しい社会経済状況下にあつて、少子・高齢化社会への対応、地方分権の推進、環境問題への対処など時代の要請に的確に対処することが期待されている。
 執行機関としての市長等特別職は、厳しい財政状況下での政策判断に非常に難しい舵取りを求められている。また、市議会議員も同様にこうした社会経済状況の中にあって、市民の負託に応えるための諸活動や議会連営の改善に積極的に取り組み、議会運営については先進自治体の一つとして毎年多数の視察を受けるなど、高い評価を受けていることも理解した。
 地方分権の時代を迎え、7万余の市民福祉の向上に多大の影響を与える市政の運営は、これら特別職等に委ねられ、高度な識見に基づく決断力と実行力が求められ、その職責は極めて重いものがある。自治体運営を進める上で重要な役割を担う特別職等の報酬等は、基本的にはその職務と責任に対応して決定されるべきものと考える。
 また、時代の変化によって、その活動、職務内容は変化するものであり、時間的、経済的負担等も報酬等の決定の重要な要素であると認識するとともに、その職務・職責は各自治体間においても基本的に大きな差異はないものと考える。
 諮問事項の審議に当たり、現在の国、東京都はもとより地方公共団体を取り巻く厳しい経済情勢、本市行財政の状況、市内民間企業や商店の経営実態や市民感情、東京都26市の特別職等の報酬等との均衡、一般職員給与との対比、人事院及び東京都人事委員会の給与勧告等の多くの資料を基に慎重に審議することとした。

3.審議の要点

 昨年秋以来、一段と厳しさを増した経済・雇用情勢のもとで民間企業においては、人員の縮小、経費の縮減、残業の抑制等さまざまな取り組みを行ないつつ、給与についても多数の事業所においてべースアップの中止やべースダウン、定期昇給の停止、賃金カットなど、抑制を行なっている。
 このような状況を受け、今年度の人事院及び東京都人事委員会は、民間準拠の原則に則り公務員の給与を民間の水準まで引き下げる、いわゆる「公民較差の逆転」を解消することが適当であると判断し、昭和23年(1948年)の勧告制度創設以来初めてのマイナス勧告を実施した。
 このことから、本審議会における審議は、従来からの経緯や審議の論点等を認識しつつも、昨年度とは違った意味で難しいものとなった。しかしながら、委員全体としては十分な共通認識のもとに審議することができた。その審議の論点については以下の三点が中心となった。
  (1)東京都人事委員会の勧告を適用することについて。
  (2)社会情勢、市民感情を考慮して引き下げることについて。
  (3)過去の経過に鑑みた是正について
 以下、これらの論点を踏まえた審議の要点を述べる。わが国の経済は最悪期を脱しつつあるといわれているものの、依然としてデフレ状態にある。また、不良債権は高水準にあり、失業率も依然高い状況となっている。政府の11月の月例経済報告における景気の基調判断でも「引き続き持ち直しに向けた動きが見られるものの、そのテンポはさらに緩やかになっている」とし、景気見通しは不確実な状況にある。
 東京都内における平成14年1月から10月までの民間企業の倒産件数は3,203件で前年同時期より500件余増加している。また市内の民間企業についても平成13年11月から平成14年10月までの倒産件数は18件を数えるなど厳しい実態が見られる。
 このことは、当市の市税収入にも見られるところであり、13年度決算における市税収入はニュータウンの入居人口の増加に連動し増加しているものの、納税者一人当たりの納税額は減少していることにも現われている。
 審議の中でも「景気の先行きは不透明というより暗い」など、多くの委員から民間企業等の厳しい実態についての意見が出された。このような状況の中で、公務員給与が民間給与を上回ることから、人事院が2.03%、東京都人事委員会が1.64%の引き下げ勧告を行なった。
 さらに、期末勤勉手当についても4年連続でO.05月分引下げるとともに、年間における官民の給与を均衡させる観点から、人事院は12月の期末手当で所要の調整を行なうこととしている。これにより、職員の年間給与は、平均15万円程度減少することとなり、平均年間給与は4年連続で減少し、過去最大の引き下げである。
 次に、現在の市議会議員の報酬額及び市長等の給料の額は、平成10年4月に改定されたものである。その額は本市と類似する他市との比較において下位に位置していたことから据え置きとしてきている。また期末手当については、昨年東京都人事委員会の勧告に基づき、支給月数をO.05月削減し、4.9月となっている。
 こうしたことから、稲城市以外の25市における特別職等の報酬等についても、期末手当の減額等改定が実施されていることから、年収べ一スにおいては類似市に比してバランスのとれた水準となっている。
 例えば、近隣類似9市の市長の年収構造に着目すると、固定分プラス比例分があり、比例分については市の規模、とりわけ人口にほぼ比例したものとなっている。このことは、長年の経験に基づく適正な結果と見られる。
 また、各市比較をする際に検討資料の一つとしてきた、近隣類似9市のうち2市(多摩市・東久留米市)については、人口等規模において当市と開きがあることから、2市を除く近隣類似7市を対象とする見方が適切であるとした。
 本年は昨年にも増して悪化している経済環境と公務員給与の引下げが実施されるという状況から、市民感情を注視したとき、特別職等の報酬等について「引き下げる方向で改定する」ことの選択で理解が得られるものと全委員が致したところである。
 審議に当たっては、まず何を根拠として、どの程度の引下げをすることが適切であるのかの判断が難しいところであつた。今日の社会経済の実態を統計的、科学的に調査検討され、政府や自治体もその結果を尊重する人事院や東京都人事委員会の勧告に準拠することが、現況に最もよく適合するものであるとの結論に達した。
 また、具体的な'削減率等については、基本的に一般職について準拠する東京都人事委員会の勧告を基本とすることで集約したが、今回の勧告が給料と期末手当の引き下げとなっていることから、当市の特別職等の期末手当の支給月数が現在4.9月(一般職は4.7月)であることに関して、これらをどのように取り扱うかが論点となった。
 この審議に当たっては、東京都人事委員会勧告をべ一スとして現在の特別職等の報酬等の実態を勘案する必要から、以下の5つのケースについて年収、引き下げ率等を算出した資料をもとに審議を行い、提言への方向付けをすることとした。
  (1)報酬等を1.64%引き下げる。
  (2)期末手当の支給月数を4.9月から4.85月とする。
  (3)報酬等を1.64%引き下げ、期末手当の支給月数を4.9月から4.85月とする。
  (4)期末手当の支給月数を4.9月から4.65月とする。
  (5)報酬等を1.64%引き下げ、期末手当の支給月数を4.7月として、さらにO.05月を引き下げる。
 審議の結果、東京都人事委員会の勧告に準拠することとし「報酬等を1.64%引き下げ、期末手当の支給月数を4.9月から4.85月とする。」との意見で一致した。
 なお、ここに至る審議の過程においては、各委員から様々な意見が出され、審議会として集約することは難しい状況もあったが、各委員にあっては、これまでのように委員総意のもとで提言するとの一致から、十分な議論を尽くし結論に達したものである。
 今回の審議会は、前述のように過去に経験のない社会経済状況のもとでの開催であり、厳しい判断を求められたところである。
 特に市政は、平成13年度の決算状況等に見られるように健全な財政運営状況にある。また、行政改革による市政改善の努力、第三次長期総合計画の推進、さらに先進的な議会改革・運営の成果等、適切な市政運営が行われている。
 このように、社会的に認められる成果をあげている中にあって、特別職等の報酬等の引き下げは、審議会としても苦渋の選択であったことを改めて申し添える。
 なお、現在当市の特別職等の期末手当の月数が、これまでの経過では据え置き等を行なってきた結果、今回の審議の過程においても議論の的になった。
 しかし、特別職の報酬等の額については、数字のみを見比べるだけでなく、基本的には特別職等の活動の評価、市の財政状況等を勘案して報酬等に反映していくことが重要である。期末手当については、当市のこれまでの報酬等についても、このことを認議した上で審議・答申を行なってきていることから、今後この点を留意することを改めて確認した。
 以上のように、多くの資料および説明、並びに誠意に満ちた各委員の意見をもとに慎重に検討し審議した。現下の民間における厳しい状況、公務員給与等の引き下げ及び市民感情等に鑑みて、各委員の議論を集約し、総意をもって以下の結論に達した。

4.提言

4−1 特別職等の報酬等について

 一般職の給与についての引き下げが東京都人事委員会から勧告され、実施される見込みであることから、一般職の給与引下げ率1.64%と同様、報酬等の月額の引き下げ措置を講ずることを妥当とする。

4−2 特別職等の期末手当について

 東京都人事委員会から一般職の期末手当についても引き下げの勧告がなされ、0.05月の引き下げが実施される見込みであることから、一般職の改定の時期に合わせ、相応の措置を講ずることを妥当とする。

以上



稲城市特別職報酬等審議会委員

(敬称略)
会 長

職務代理

委 員

委 員

委 員

委 員

委 員

委 員

委 員

委 員

   金子 春生

田中 實

馬場 昇

宮田 光治

遠藤 誠

笠井 潤

加藤 純子

大野 行男

金田 裕之

二見 美和子