「しんぶん赤旗」東京のページ 2002年11月6日・7日より
稲城市の南山開発問題で日本共産党の緒方靖夫参議院議員事務所の和田雅光氏に寄稿していただきました。
自然豊かな南山を宅地開発のためにつぶす稲城市・南山東部土地区画整理事業(89ヘクタール)の環境アセスメント評価書が発表されました。昨年3月に公表・縦覧された評価書案に対する市民の意見や知事・関係市長の審査意見書などをふまえたものです。 全体像見ない調査に批判
評価書の新しい特徴のひとつは,焦点となっているオオタカについて,現在および今後の生息状況を追加調査することを明記したことです。
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豊かな自然が残る南山の里山
9月12日付本紙既報の通り,評価書案のオオタカの生息実態に関する記述をめぐっては,系統的にその生息調査をすすめてきた市民グループなどから,事実と異なるとのきびしい批判が行われていました。例えば,南山の中でオオタカが餌場などで利用する範囲(高利用域)が著しく狭く評価されていること,1998年に南山で繁殖したのに「しなかった」とされていること,幼鳥の飛翔が確認されているのに「ない」とされていること,ひ周辺に営巣するオオタカの生息の全体像を把握せずに南山の位置づけを行なっていること,などです。
これらの問題点は,評価書でも是正されていません。しかし,評価書では,工事施工中の「環境保全のための措置」として,「2002年から事業が完了されるまでモニタリング調査を行い,計画区域内における営巣木の活動状況をより詳細に把握する」「営巣にかかわる行動が確認された場合,専門家の意見を聞き,調査結果に対応した措置をとる」「2002年の調査についてはその結果がまとまり次第,調査結果に対応した措置をとる」との記述が新たに付け加えられました。
追加調査の実施は一歩前進ですが,これはすでに今年3月の都知事の審査意見書で提起されていたものです。本来なら,少なくとも今年度の調査結果をふまえてアセス評価書を作成するのが当然です。
アセス事業者は,今年分の調査結果をすみやかに提出し,都は適切な形でそれを市民に公表すべきです。
全国の流れをふまえてこそ
同時に,いま何よりも必要なことは,オオタカの生息調査を,開発者によるコンサルタント会社への委託調査まかせにするのではなく,専門家によるオオタカ検討委員会をつくり,より客観的で本格的な調査を行うことです。
そもそも全国では,静岡空港,第2東名,圏央道,新山梨環状道路など大規模な開発の予定地でオオタカの生息が確認された場合,専門家で構成するオオタカ検討委員会を立ち上げ,生息調査と保護のあり方の検討を行うのが流れになっています。都市公団による川口リサーチパーク計画(八王子市内)では,7人の検討会のメンバーの中に市民団体が推薦する委員が3人入り,毎月の調査も市民と共同で行なわれました。
南山でも,オオタカの生息が確認されているのですから,こうした全国の流れをふまえて対応するのが当然です。
そればかりか,南山の場合は,コンサルタント会社の調査をもとにした環境アセス評価書の記述に対し,専門家や市民から深刻な疑問が提起される異例の事態となっています。こうした現状を解決し,市民と開発者が少なくとも事業の是非を正しく判断する共通の出発点に立つためには,専門家の手によってこれまでの調査結果を検証し,あらためて生息状況の全面的な調査・把握を行なうことがどうしても必要です。
都は,検討委員会発足のために,積極的なイニシアチブを発揮するべきです。
南山開発の環境アセス評価書のもう一つの重大な特徴は,すさまじい自然破壊となるのは明らかなのに,さまざまな理由をつけて生物の「多様性は確保できる」などとし,大規模な開発を正当化・容認していることであり,この点では,評価書案からまったく変わっていません。
植物群落91%を完全に破壊
評価書によれば,南山の開発計画を実行すると,現在72.7ヘクタールある植物群落の91%が完全に破壊され,残るのはわずか6.5ヘクタールだけとなります。その結果,植物では,絶滅のおそれがあるとして環境省レッドデータブックに記載されているタマノカンアオイ,エビネ,都が保護を呼びかけるセンブリの生息地17地点すべてが消失します。
同じく絶滅のおそれがあるとされるトウキョウサンショウウオ,都が保護を呼びかけるヤマアカガエル,ニホンアカガエルなどの生息地もなくなります。
残留緑地を残すといいますが,その面積は,南山全体のわずか8%にすぎません。工事完了後10年を経た時点でも,植物群落の予測面積は,公園などを含めても現況の2割以下です。ごく一部の緑地を残せば「生物多様性は確保される」から大規模な開発も認められるというのは,自然環境を守る立場とは無縁のものです。
また評価書は,貴重植物は移植し,トウキョウサンショウウオなどは残留緑地内の池に移すとも書いていますが,詳しい生態がいまだ十分には解明されていないもとで,移植による繁殖がきわめて難しいことは常識です。
これでは,「何のための環境アセスなのか」との市民の批判が高まるのは当然です。南山開発の環境アセスは,開発者が調査会社に委託して行なう現在の環境アセス制度の問題点を鋭く示すものともなっています。
問われる都と稲城市の態度
南山の開発をめぐっては,今後,「東京都における自然の保護と回復に関する条例」の規定にもとづき,都と開発者による協議,都の同意が求められます。
ここでも焦点の一つはオオタカです。都条例にもとづく開発許可の基準では,「猛禽(もうきん)類への配慮」の項目で,オオタカの営巣中心域では「土地の造成や樹木の伐採は原則として行なわないこと」とし,高利用域などでの開発行為にも規制を課しています。
一方,稲城市民が情報公開条例を用いて入手した事業者の検討資料によれば,区画整理事業全体の事業費が476億円にものぼり,その約1割が市の負担になる見込みであることが明らかになりました。稲城市の年間市税収入110億円の半分近い大変な金額です。さらに,減歩率についても,日本共産党稲城市議団の議会質問に対し,市は,「計画の65%よりもっと増える」と答弁しています。
アセス評価書は,オオタカが「再び計画区域(南山)で営巣するようになる可能性は十分ある」(資料編)としています。地権者のなかでも不安の声がひろがるバブル期の開発計画から,オオタカの舞う多摩の里山をどう守るのか,都と稲城市の対応が問われています。