マンションだより「新しい絆」 1999年7月・8月
| 欠陥マンションを考える |
いま分譲マンションがどんどん建設されています。しかしそのなかで「手抜き工事」と思われる欠陥マンションの苦情も増えています。
高いローンを組んで買ったマイホームが欠陥だったとわかったら大ショックです。そこで万が一、欠陥が見つかった場合、泣き寝入りしないための対応を考えてみました。
1.欠陥が見つかったらどうする
欠陥、または、それらしきものを見つけた場合の対応が適切に行なわれるかどうかで、その後の改修工事・補償などに天地の差がでてきます。
共有部分の場合は管理組合で対応すること。占用部分に見つかった場合も、個人的に対応しないで管理組合に連絡し、他の部屋ではどうかなど管理組合でアンケートをとってみるなどの対応が大切です。
なぜかといいますと、欠陥が見つかる場合はマンション全体に起きていることが圧倒的に多いためです。
最初の対応を誤ると解決が困難になったり、長引くことになります。
2.管理組合全体で対応を考える
欠陥を見つけて指摘しても建設会社はおいそれとは認めません。個人で対応しても「問題はありませんよ」と逃げられてしまいます。
個人の力だけでは、建築・販売会社に欠陥をいってもなかなか太刀打ちできないのが普通です。しかし、管理組合全体の対応には、建築・販売会社も逃げるわけにはいきません。管理組合は、区分所有法で認められた社会団体です。居住者が団結した管理組合は大きな力になります。
3.専門家の力も借りて
建築・販売会社を相手に欠陥を認めさせたり、改修工事を要求するには、居住者や管理組合だけでは技術的に限界があります。そこではどうしても居住者の立場に立った専門家の力が必要です。
特にマンション躯体(共有部分)の欠陥は、目に見えるところより見えない部分にあることがほとんどで、専門家の診断が必要です。見た目だけで改修し、あとで大問題になっても取り返しがつかないことにもなります。
居住者のなかに専門家がいるときには力を借りるとか、信頼できる専門家に力を借りることが重要です。建築・販売会社の診断を鵜呑みにしないことです。
鈴木博行(一級建築士)
多くのマンションが大規模修繕に
首都圏では1994年から3年間で平均8万戸のマンションが新たに建設されましたが、これは過去の年平均の1.5〜2倍にあたるといわれています。
バブル崩壊後の地価の値下がりや低金利の住宅ローンなどが影響したためで、第6次マンションブームなどとよぶ人もいます。その後きびしい経済情勢のなかで、マンションの伸びは低迷しましたが、最近いっそうの低金利と優遇税制が加わってまた伸びが目立ち始めました。こうして現在民間分譲マンションの数は300万戸をはるかに超えるものと見られます。
さらに、97年2月3日付の「日経ビジネス」誌が「建設白書」をもとにして推定したところによると、2010年には、このうち100万戸が築30年を迎えることになります。このことから見ても現在、大規模修繕が必要になる築20年のマンションもおよそ100万戸に達しており、今後膨大な数のマンションが次々に大規模修繕の時期を迎えることになります。そこで長期修繕計画をつくることが急がれるわけです。
長期修繕計画とは?
マンションも年を経るにしたがって建物や設備が老朽化しています。使っている材料や仕上げの程度、施工の良否、立地条件などによって差はありますが、築10年くらいから外壁や屋上防水の補修、ポンプ類のオーバーホールなどが必要になり、築20年ぐらいたつと屋上防水の全面張り替え、水槽の取り替えなど大規模の修繕が必要になります。外部手すりの塗装など3〜4年ごとに塗り替えなければ長持ちしません。このための費用を積み立てておかないと一時のたいへんな出費になってしまいます。どの時期にどんな修繕をするのか、そのための費用はどのくらいかを決め、そのために必要な費用を定期的に積み立てをしていく必要があります。これが長期修繕計画です。
できるだけ早く全員の合意を大切に
さて、あなたのマンションでは長期修繕計画はつくられているでしょうか。い是は、販売会社の方針として、できるだけ安い価格で売れるように管理費や修繕積立金を低くおさえて販売していました。しかし、実際の必要額と積立額との差が大きくて一度に支払う額が大きくなり、社会問題にもなりました。
このため、92年に総務庁が建設省にたいして長期修繕計画の徹底のための指導を強めること、マンション販売業者が修繕計画や積立金の必要性を管理組合に徹底するよう指導することなどを勧告しました。これを受けて、97年2月には建設省が出している「中高層共同住宅標準管理規約」の改正が行なわれ、「長期修繕計画の作成又は変更に関する業務」が管理組合の業務のなかにつけ加えられました。
また、最近は販売業者団体も、新しくマンションを販売する際に、短くても20年間の金額を入れた長期修繕計画を提示するようにしています。しかし、実際には計画はできていても、それに見あった積み立てが行なわれていないマンションがまだまだたくさんあります。
これでは、大規模修繕の際に一度に支出する額が大きくなって大変です。特に、今後居住者の高齢化が進行するにしたがって負担能力の差も大きくなることが予想されるため、計画はできるだけ早く、しかも全員の合意に基づいて実態に即して決める必要があります。
どのようにして作るのか
では、長期修繕計画はどうやって作ったらよいでしょうか。まず、入居してすぐの場合には、前の項でのべたように販売会社にたいして計画の提示を求めて管理組合として検討し、必要があれば修正して全員が納得するものにすることです。
しかし、必ずしも積極的に応じる販売会社ばかりとは言えませんので、その場合には専門家の協力が必要になります。前にものべたように、建物は使われた材料や仕上げの程度、施工の良否、立地条件などによって傷み方も様々です。何年たったら何を修繕するという目安はありますが、まだ傷みがそれほどでもないのに無駄な費用を使う必要はないし、反対に目安より早く傷んで急いで手を打つ必要がある場合もあります。そこで実態調査をするわけですが、これは素人では難しいので専門家の協力を得て実施することが必要です。長期修繕計画は、その名の通り20〜30年という長期にわたるものです。いまの時点で計画していても長い間には老朽化の実態と合わなくなることがあります。したがって、計画を早めたり、先送りしたりすることが必要になります。
また、物価の変動を予想すると少なくとも5年に1度くらい専門家の協力を得て見直しをすることが必要です。さらに今後の技術の進歩で工事の方法や材料も変化するでしょう。それらにともなって計画を変更することも当然ありえます。
「マンションは管理を買え」
最近、「マンションは管理を買え」ということがよくいわれます。建物そのものがよくできていても、管理が悪いと傷みが激しくなり、人間同士の付き合いもぎくしゃくして住み心地が悪くなって結局、マンションの価値が下がってしまう。だからマンションを買うときには建物の出来具合だけでなく管理がどうなっているかをよく調べて買うべきだということを言っているのです。
住宅金融公庫の中古マンション購入の際の貸し付け審査のなかに修繕計画や積立金などの項目が入ってきていますが、これもその一つの現れです。このことは、別の言い方をすれば、居住者同士の合意がどこまでできているかがマンションの価値判断になるということになります。このことは阪神大震災後の、被災マンションの処理対策をめぐってきびしい現実となって現れましたが、これについては別の項でのべることにします。
つづく