マンションだより「新しい絆」 2004年10月号


滞納管理費等の支払い請求権は5年で時効(最高裁判決)

管理組合の滞納防止・対応策をつよめることが必要に


 滞納している管理費,修繕積立金を何年まで請求できるか(高裁判決は10年)で争われた訴訟で,最高裁は今年4月,「5年を超えた分は時効」とする初判断を示しました。今後は,この最高裁判決をふまえ,管理組合として管理費等の滞納問題にどう取り組むかについて考えてみました。


 管理費や修繕積立金は,マンションを維持・管理する費用として,居住者が必ず負担しなければならないものですが,管理組合の3割が滞納者をかかえていることが明らかになっています(国土交通省「03年度マンション総合調査」)。
 管理組合として滞納への予防策と,滞納問題が起きた場合の対策を,あらためて検討していく必要があります。

■管理会社まかせにせず管理組合が納入状況のチェックを■

 区分所有者の中には,経済的理由のほかに,「管理業務内容にしては管理費が高い」「管理人があまり働いていない」などを理由に,管理費等を支払わない人がいます。管理組合は,こうした誤解や不理解を広報などを通して日頃から解消していく努力をはらう必要があります。
 通常,管理会社との委託契約では,滞納者に対する督促業務は,「納入状況報告」「3カ月まで督促を行なう」,それでも支払いがないときには,管理会社は督促業務を終了し,「それ以降の収納の請求は,管理組合が行う」と定めています。それだけに管理組合として日常的に納入状況を掌握していることが重要です。

■滞納者への対応基準を決めておく■

 管理組合は,滞納者がでた場合,「滞納○ヶ月目に滞納者に対して理事が出向き催促する。○ヶ月目に,理事長名(もしくは弁護士名)で内容証明郵便を出す。○ヶ月目で裁判も辞さない」などの対応基準を決めておくことが大事です。そうすれば,誰が理事長や担当理事になっても,回収事務をスムーズに進めることができます。

■管理規約にペナルティなどを設定■

 管理規約の中に,滞納にそなえて「駐車場の利用を制限できる」「遅延損害金を別途設定できる」などの罰則規定を明記しておきます。裁判になった場合,滞納者に「裁判費用や弁護士費用が請求できる」ことや「滞納者に対する訴訟は理事会に一任し,総会で事後承認する」ようにしておくことも大事です。

■裁判も辞さない強い決意で「時効の中断」を含む法的措置を■

 長期滞納者に対する主な法的措置は次のようなことが考えられます。

◇簡易裁判所による「支払督促」

 簡易裁判所の書記官が,申し立てをした債権者(管理組合)の言い分だけを審査し,請求者に「理」があれば支払を督促する制度。

◇簡易裁判所への「小額訴訟」

 滞納額が60万円以下である場合に,簡易裁判所が一回の審理だけで判決を出す制度。
 ※いずれも弁護士は不要で事務手続だけでできます。

◇裁判所への「訴訟」

 原告(管理組合)・被告(滞納者)の双方が,裁判所で主張を出し合い,証言したり証拠を提出したりして判決を受ける制度。

時効の中断は・・・

 「時効の中断」は「訴訟」「支払督促」などとともに,滞納者が書面等により債務(滞納)を「承認」した場合にも成立します。
 なお,内容証明郵便などによる「催告」でも時効は中断(「停止」)しますが,「催告」の後6ヶ月間以内に裁判上の請求などをしなければ,その効果は消滅します。


マンションの水漏れ・水害対策を考える


 マンションのトラブルで多い水漏れ事故。ある損害保険会社の統計によるとマンションで起きる事故では水漏れ事故が47%と最も多いといわれています。水漏れとともに台風や集中豪雨の時の雨漏れや地下階への浸水などへの備えも検討しましょう。


損害賠償の責任は誰が負う?

◆居住者の過失の場合は 当事者間の話し合いで

 「洗濯機のホースが給水栓からはずれて」「子どもがトイレのボールタップをいたずらして階下に水漏れ」…などの場合は,水を漏らした人が,修理費用や再購入費など原状回復に必要な費用を損害賠償しなければなりません。賠償の範囲については当事者間の話し合いで。

◆設備に問題があった場合は 原因が専有部分なら区分所有者に

 水漏れ事故が怒った場合が給排水間などの設備の場合は,専有部分なら区分所有者に,共用部分なら管理組合に責任があり,損害賠償をすることになります。

◆原因が特定できない場合は 管理組合の責任に

 原因を調べても占有部分か共用部分かはっきりしない場合は,区分所有法(第9条)で,共用部分に瑕疵(かし)があるとして,管理組合が損害賠償の責任を負うことになっています。

◆不具合が原因の場合は デベロッパーの責任を問うことも

 建物や設備など構造的な欠陥,不具合と思われる場合は,当面の措置をした上でアフターサービスの期間内でなくても,デベロッパー(売主)に対して瑕疵担保責任を問うことができることもあります。

水害への備えも

 マンションでの水害は,屋上や外壁,排水の問題による雨漏り,地下への浸水による汚損,設備・機械の破損などがあります。日常的な建物・設備のメンテナンスや大雨のときのパトロールなどが大事です。水災の多い地域では損害保険の主契約書に「水害」を付加する管理組合もふえています。


いざというときに役立つ マンション向け災害保険

 マンションの水漏れ事故や水害など多額の費用が必要なときに役立つ損害保険。いま,各保険会社のマンション向け損害保険は多様になっており,保険加入や実直しの際は十分な検討を。

●区分所有者が契約する 個人賠償責任保険

 洗濯機の水漏れなど原因が専有部分に起因する賠償事故に備える保険。

●管理組合が契約する マンション総合保険(通称)

 火事,落雷,爆発など共用部分の災害・事故などの保障を基本にした保険。これに付加できる「特約」では次の賠償,補償もカバーされます。

【施設賠償責任保険】(特約)

 共用雑排水管のつまりによる逆流で居室(専有部分)を汚損した−共用部分に起因するさまざまな賠償責任に対応。なお,漏水の原因が設備の老朽化や自然消耗による場合は補償の対象になりません。

【個人賠償包括特約】

 管理組合が全戸まとめて加入し,専有部分が原因の事故の賠償もカバー。

【水害】(特約)

 大雨が原因で共用部分のピット式駐車場に水がたまり設備が破損した,地下駐車場部分に一定以上の浸水があった,などの場合に「水害」と認定して補償する例があります。

※掛け捨て型・積立型

 保険料の安い「掛け捨て型」でも,「積立型」と同様の補償をする商品(保険)もあります。