防災訓練の変質、高齢者・障害者差別発言…

石原知事の特定の政治的立場を
都政に持ちこむのは許されない

2000年 9月1日 (金)「しんぶん赤旗」


日本共産党東京都議団 木村陽治幹事長にきく

 自衛隊の活動を突出させた東京都の総合防災訓練が三日におこなわれます。本来主役の自治体や住民は「わき役」にされたもので、石原慎太郎都知事が特定の政治理念を都政に持ち込んだ結果です。就任以来繰り返す暴言や、福祉切り捨てに見られる石原知事の姿勢について、日本共産党東京都議団(二十六人)の木村陽治幹事長に聞きました。

 

自衛隊だけが突出し、自治体や住民そっちのけ。最も大事な初期消火や救助の訓練はおざなり

 ――東京都の九月三日の防災訓練が、問題になっていますが、どう考えたらよいのでしょうか。

 木村 都が発表した計画をみると、ほんらい自治体として追求すべき防災訓練からかけ離れ、自衛隊の七千百人もの大部隊による演習が中心の異常なものです。

 いま必要なのは、阪神・淡路大震災の教訓を生かし、自治体と住民や消防などが協力して、震災発生直後の消火・人命の救出と救助の訓練を積み上げることではないでしょうか。

 しかも、防災訓練への自衛隊の参加のあり方という点でも、多くの問題があります。

 自衛隊が参加するというなら、大切なことは被害の現場で活動している自治体や消防などの防災組織、住民の要請にどうこたえるかこそが大事です。ところが、都の防災訓練はこうした立場がきわめてとぼしく、肝心の住民などの防災組織と連携するための訓練がほとんどないことです。それどころか、多くの場合、これらの防災組織が「カヤの外」におかれています。訓練会場は八自治体にまたがっていますが、参加する自治体は四区だけ。それもPR展示に加わるだけの区もあります。

 ある訓練会場では、防災活動としてかかげられている十の訓練のうち、九つの訓練が自衛隊によるもので、残る一つは石原知事が視察する訓練だけ。消防庁などは展示などだけを受け持つというありさまです。しかも、訓練のなかには震災とはなんの関係もない装甲車を走らせ都民の体験乗車をおこなうことまで含まれているのです。

 消防庁のある幹部も「住民と協力してやることはもっといろいろあるのに、時間も場所も限られてしまうので、できない」とのべていました。

 しかも、今回はじめて陸海空三自衛隊の統合運用として、統合幕僚会議議長が市ケ谷の中央指揮所で自衛隊の訓練の指揮をとります。

 そして、空からの被害調査など情報収集は自衛隊中心であるうえ、肝心のこの情報は都にも知らされません。

 現場の実態をもっとも知っている自治体や防災組織との連携を欠いたまま、実態を十分に知らない自衛隊の幕僚が現場と離れて、現場には情報も知らせないで指揮をするのでは、「防災訓練でなく、軍事訓練ではないか」という都民の批判の声が高まるのは当然です。

 三宅島のように、住民や消防などの手にあまる大災害にみまわれたときに、防災そのものを専門にしていない自衛隊が、防災活動に参加することはあります。しかし、もっとも防災対策で肝心なのは、防災そのものを目的としたレスキュー隊などの日常的対応能力や防災まちづくりの充実です。建物の耐震、不燃性の強化、救出のためのハシゴ車やクレーン車の確保、さらには地域の防災組織や住民などの消火、救助などの初動対応能力の強化が求められています。

 この点で、阪神・淡路大震災以降、私たち日本共産党都議団が一貫して要求してきたハイパーレスキュー(消防救助機動部隊)の創設などは実現しました。しかし、東京はまだまだ消防・消火能力が不十分であり、とくに人命救助に欠かせないクレーン車などの重機・資機材の整備が著しく立ち遅れています。今回の訓練がそうであるように、「自衛隊がくれば万事解決」というやり方は、肝心の防災体制をおざなりにすることにつながりかねません。

 

「戦車、装甲車で町を封鎖する訓練もしてほしい」「治安維持も遂行していただきたい」――石原氏にはどう都民の命と財産をを守るのかという立場がない

 ――なぜ防災訓練がゆがめられ、自衛隊突出の異様なものになってしまったのですか。

 木村 石原氏は都知事になるとすぐ、「陸海空の『三軍』を使った災害時の合同大演習をやってもらいたい、東京を舞台に」、「北朝鮮とか中国にたいするある意味での威圧にもなる。せめて実戦に近い演習をしたい。相手は災害でも、ここでやるのは市街戦ですよ」(月刊誌『Voice』九九年八月号)などと発言しているんですね。

 そして、今年になってから、「軍隊を実動させる訓練で、これによって国民の軍隊への信頼も得られる」(一月十六日「フジテレビ」)、「戦車、装甲車で街を封鎖する訓練もしてほしい」(月刊誌『正論』二〇〇〇年三月号)、「治安の維持もみなさんの大きな目的として遂行していただきたい」(四月九日自衛隊の記念式典)などと、防災訓練の名を借りて、治安訓練や市街戦訓練までやる意図をあけすけに語っています。そして、「最初は小学校レベルのことから始めて、毎年それを積み上げていく」(四月二十一日都庁での記者会見)といって、今年の防災訓練を手始めに、自衛隊出動をどんどんエスカレートしています。

 石原知事の発言には、都民を大地震からまもるという立場が欠け落ちています。

 それどころか、いま、石原知事は、東京都の震災予防条例を改正し、行政責任を後景にしりぞける一方、都民にもっぱら「自らの生命は自らで守る」(条例改正の中間のまとめ)という立場をおしつけようとしているのです。

 

知事としてあるまじき憲法否定の押しつけ

 ――三国人発言、靖国神社公式参拝など石原知事の問題言動が相次ぎ、都民の批判が広がっていますね。

 木村 自衛隊の式典では、「不法入国した多くの三国人、外国人が非常に凶悪な犯罪を繰り返しているから」、自衛隊の治安出動が必要だという暴論を主張しました。この発言に対しては、日本はもとよりアジア諸国のマスコミや在日外国人団体などから、「憤怒とともに危険性を感ずる」(韓国の「朝鮮日報」四月十二日付社説)などときびしい批判の声があがりました。このときは、「卑劣なセンセーショナリズムだ」などとマスコミに八つ当たりしながらも、「発言を曲解している」と弁解しました。

 今年八月には、都知事として初めて靖国神社を公式参拝しました。このとき、私たちはもちろんですが、広範な都民がきびしく批判しました。この問題では、この間の石原知事の都政運営に基本的にすべて賛成してきた公明党ですら、「憲法に照らし、疑義があり、適切でないと考える」とのコメントを発表したほどです。ところが、こんどは石原氏は、弁解すらしないで「公人として参拝したら何がいけないの」と居直りました。

 ここには、「わけのわからない憲法を米国から押しつけられた」(二〇〇〇年一月十七日都職員への訓示)、「日本は完ぺきな再軍備をする。そういう軍事大国になったらいい」(九九年「産経」八月十九日)などという憲法否定の立場、侵略戦争への無反省とアジアの人びとを蔑視(べっし)する立場を、知事としての地位を利用して号令しようという意図が露骨にあらわれています。

ゆきづまった自民党政治に石原知事の特異な立場が持ちこまれ、東京は福祉切り下げの発信基地に 

 ――障害者にたいして、「人格があるのか」と発言するなど、石原知事の人権感覚も異常だと言わなければなりませんね。

 木村 石原知事が昨年九月、都立府中養育センター(重度心身障害者施設)を視察したとき、「ああいう(障害をもった)人ってのは、人格あるのかね」「ああいう問題って安楽死なんかにつながるんじゃないか」などと語ったことも、都民のみなさんのつよい怒りの声をひろげましたね。そればかりか、お年寄りの自殺率が世界一多い、という問題についても「自殺はボケにくらべてはるかに人間的な選択ともいえる」(『流砂の世紀に』)などということも言っています。

 いま、自民党政治がゆきづまり、財政破たんのつけを消費税増税や福祉切り下げにまわそうとする政策が全国的につよめられています。しかし、石原氏という、弱者に対する特異な差別的感覚をもつ人物が知事となった都政では、全国のなかでも突出した福祉切り下げがすすめられています。

 今年の第一回定例都議会では、シルバーパスの全面有料化、老人医療費助成や老人福祉手当の段階的廃止、障害者医療費助成や障害者手当、児童育成手当の切り下げなどが強行されました。東京都では、かつての革新都政時代にきずかれた福祉がまだ残されていますが、石原氏の切り下げによって、他の大都市とくらべて水準が低下するものがふえてきました。革新都政時代、東京都は全国の福祉充実を切り開く発信基地でしたが、石原氏のもとで、百八十度切り替えられ、福祉切り下げの発信基地にされてきているのがいまの都政の実態です。

 石原氏はことあるごとに「首都東京から、改革にむけたメッセージを発信する」といっていますが、その「改革」の基本にあるのはこのように、憲法に明記された平和、民主主義、人権の原理原則を敵対視することです。

 彼のこうした政治信条は、憲法を順守すべき知事の立場とは絶対に相いれないものです。

 石原氏が、みずからが正しいと信ずる政治信条をもつこと自体は自由です。しかし、石原氏の場合、都知事選で自らの政治信条そのものについては公約のなかに入れませんでした。

 にもかかわらず、石原氏が選挙で公約もしなかった特定の立場をしきりに都政に持ちこむことは断じて許せません。 

 私たちは、石原都政のもとでも、大銀行への外形標準課税など評価できることには賛成してきました。しかし、石原氏は、これまでどの知事もできなかったような最悪の福祉切り下げをおこなうばかりか、憲法を踏みにじる立場を都政にもちこんでいます。私たちは、こうした石原知事の反都民的な都政運営と毅然(きぜん)としてたたかうものです。


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