東京の福祉 根こそぎに

「元に戻さぬ」と石原知事
弱者は死ねというのか

2000年10月5日(木)「しんぶん赤旗」より


  表を見てください。 10月1日からのシルバーパス全面有料化はじめ東京都の石原慎太郎知事が、自民、公明などの賛成で決め、いま次つぎに実施に移している 、福祉切り捨ての一覧です。 影響を受ける都民は延べ150万人、都政史上、類のない福祉切り捨てです。 その深刻な影響が出始め、高齢者や障害者から「弱者は死ねということか」 という悲痛な声があがっています。 しかし石原知事は、「(廃止事業を)元に戻す考えはない」(9月議会での日本共産党の代表質問への答弁)と冷淡な姿勢を変えません。石原知事に、都民の声は聞こえないのでしょうか。(東京都・長沢宏幸記者

 

石原都政による都政史上最大の福祉切り捨ての影響

制 度 これまで どうだったのか どうなったのか 影響が出 る
時期
影響
人数


シルバーパス 70歳以上に無料パス(年収358万円以上は20510円)
郵送や本人に直接届ける
全面有料化 年 1000円に有料化、住民税課税者は年20510円(経過措置で段階的に)。
バス営業所などで自分で買う
10月1日
(交付は9月から)
80 万人以上
老人福祉医療助成 65歳から69歳まで 6年で廃止 65歳の人は66歳から、64歳の人は67歳から。63歳以下対象外 7月1日 40万人以上
老人福祉手当 65歳以上の寝たきり(70歳以上は所得制限なし)
月55000円(70歳以上)
3年で廃止 新規は受け付けない
受給者のみ段階的減額・廃止に
4月1日
(8月末までに4〜7月分を支給)
約6万人


重度心身障害者手当 24時間常時介護の人
月60000円
所得制限など導入 65歳以上新規対象者は受け付けず。
3カ月以上入院者除外
8月1日
(9月20日ごろに8月分を支給)
2000人以上
心身障害者福祉手当 月額15500円(所得制限あり 所得制限など強化 65歳以上新規対象者除外
年収 492万円以上対象外
8月1日
(12月に8〜12月分を支給)
1万人以上
心身障害者医療助成制度 無料 (所得制限あり) 本人負担導入
所得制限強化
65歳以上新規対象者除外、年収 635万円以上対象外に。1回 530円など 9月1日 3万人以上
児童育成手当(障害) 月15500円(所得制限あり) 所得制限強化 年収 635万円以上対象外 6月1日
(10月に6〜9月分を支給)
約1000人


ひとり親家庭医療費助成 無料 (所得制限あり) 本人負担導入 1回 530円など。低所得者は入院給食費のみ負担 2001年
1月1日
15万人以上
児童育成手当(育成) ひとり親家庭など月額15500円(所得制限あり) 所得制限強化 年収 635万円以上対象外 6月1日
(10月に6〜9月分を支給)
約4000人
乳幼児医療費助成 4歳未満無料(所得制限あり) 入院食事代導入 1日 760円
ただし対象を4歳未満から5歳未満に
10月1日  


精神通院医療費 無料 本人負担導入 住民 税課税者は5%自己負担 9月1日 1万5000以上
大気汚染健康障害 18歳までのぜんそく患者の医療費無料 入院食事代導入 1日 760円 9月1日 4000人以上
小児慢性疾患 18歳未満の糖尿や膠原病などの慢性疾患患者の医療費無料 入院食事代導入 1日 760円 9月1日 約100人
原爆被爆者二世 医療費無料 入院食事代導入 1日 760円 9月1日 約30人
特殊医療(人工透析) 医療費無料 入院食事代導入 1日 760 9月1日 約2500人

都営住宅家賃全額免除制度 各種控除後の収入・月12000円以下の世帯 原則廃止 例外は大規模被災者、生活保護受給者で長期入院のため住宅扶助を打ち切られる世帯など 9月更新時 3万2000世帯

 

老人福祉手当が減額、3年後廃止へ

介護保険実施 負担がさらに

  「介護保険が始まったからこそ老人福祉手当が必要なのに」。 父親 を3年間、介護してきた男性(54)=足立区=は、やりきれない思いをにじませ 、こう語りました。

 父(89)が倒れたのは1997年10月。道で転んだのがきっかけで、寝たきりになりました。 男性は、写植の仕事を辞めて介護に専念するこ とを決断します。 父の年金月9万5000円と老人福祉手当5万5000円があれば、なんとかやっていけると考えたからです。 主な介護費用が、週2回のデイサービスの食費代、月3200円だけというのも計算のうちでした。

  ところが、4月からの介護保険実施で状況は一変します。

  父は「要介護度3」に認定され、利用料は一気に月約2万円にもふくらみました。 さらに父子を追いつめたのが、老人福祉手当の減額です。 同手当は3年後の廃止が決まっており、それまで毎年4分の1ずつ減額、4月からは4万1250円になりました。

  「この手当がなくなったら、私が働くしかありません。そうなれば、父は自宅で暮らしたいといいますが、特養ホームに預けるしかありません。 お金がない人は在宅介護もできないのですね」と男性は肩を落とします。

 その特養老人ホームへの入所も、3年待ちを覚悟しなければなりま せん。

手当カットは年金収入以上

  東京都は、福祉を切り下げる理由に、年金制度など国の施策の充実をあげます。 しかし、東京の年金受給者の6割を占める国民年金受給者の平均受給月額(98年)は、わずか約5万900円です。

  墨田区の都営住宅に夫婦で住む女性(84)の国民年金は月額1万円、介護している夫(87)は同3万円で、2人合わせても月4万円です。 「要介護度4」の夫にかかる介護保険の利用料は月2万円。 女性は「老人福祉手当の5万5000円があって、なんとか食べてこれました」といいます。

  ところが、女性は3年後の老人福祉手当の廃止を待たず、8月から月1万5500円の障害者福祉手当に切り替えました。 障害者福祉手当制度も改悪されたため、7月末までに同手当に切り替えないと、受給資格がなくなるからです。 石原都政は “食べることで精いっぱい”の人に、こんな冷酷な選択を迫ったのです。

  女性はぽつりといいました。 「しかたがありません。 でも楽しみにしていた年1回の旅行がつらくなります」

障害者医療費助成の所得制限強化

無料の薬代を9月から負担

  石原都政の福祉切り捨ては障害者も例外ではありません。

  狛江市に住む男性(68)は、定年退職間際の95年8月に心臓手術をして、障害者手帳一種一級の障害者になりました。 いまでも5種類の薬を服用、リハビリも欠かせません。

  8月まではすべて無料でしたが、障害者医療費助成の所得制限が強化されたため、わずか6万円のオーバーでしたが、この9月から月4240円かかるよ うになりました。 妻(62)も白内障で月3000円前後の治療費がかかります。

  「心臓手術のときに蓄えも崩してしまい、医療費のことを考えると気持ちが暗くなってしまいます。 現役のときは高額の税金を払ってきたのに、障害者になったとたん福祉カットなんて…。 石原さんには、財政難のなかでも都民のために頑張ってくれ と期待していたのが、やっていることは、弱いものは死ねというようなことばかり。裏切られたと感じているのは私だけでしょうか」。 心臓が悪い男性の語り口は穏やかですが、目には怒りがいっぱいです。


もとの制度に、手当は拡充を

日本共産党が追及

都議会

  4日まで開かれた9月都議会で日本共産党は東京の福祉を根こそぎにする石原知事を正面から追及しました。 介護保険の都独自の利用料軽減措置の実施とともに、老人福祉手当は段階的廃止・削減をやめ、介護保険の欠陥をおぎなえるように拡充し、 老人医療費助成、障害者医療費助成、障害者関係の福祉手当をもとどおりの制度に直ちに戻すよう強く迫りました。