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新しい歴史教科書をつくる会の教科書にはこんなにたくさんの問題があります
●この教科書は「普通の」教科書ではありません
私たちがこの教科書の採用に反対するのは,この教科書が日本国憲法を否定し,戦争を賛美する思想を子供たちに植え付けようとする,公教育では許されないものだからです。他の教科書と同列において比べられるような「普通の」教科書ではないのです。
●歴史研究・教育の成果を無視して一方的な歴史観を押し付ける
「歴史を学ぶのは,過去の事実を知ること…ではない」「歴史を学ぶとは,いまの時代の基準からみて,過去の不正や不公平を裁いたり,告発したりすること…ではない」などと書いています。このようにすれば,大変都合のよい「歴史」が書けます。日中15年戦争やアジア太平洋戦争について当時の人々は「聖戦」だと教えられていました。また,韓国を植民地にしたことについて,日本にとって必要であり,合法的だった,と考えていました。だから,侵略戦争ではなかった,韓国併合は正当だった,と教科書に書けるわけです。(歴史p6)
●神話を歴史的事実のように取り扱っています
神話をたくさん取り上げ,神武東征,日本武尊東征の地図を載せ,あたかも歴史の事実であったかのように書くなど,史実と混同しかねない扱いになっています。(歴史p42,p43)
●「天皇中心の「神の国」」という皇国史観で書かれています
神武天皇から始まって昭和天皇の生涯を美化するコラムでしめくくる天皇中心の構成になっています。また,戦前・戦中の国定教科書「国史」と同様に神武天皇を初代として,昭和天皇を第124代と書いています。歴史の事実を無視して,幕府による支配の時代も,征夷大将軍の地位は天皇の任命によるものと必ず記述して,天皇が日本社会の最高の権威者であることを強調しています。(歴史p126,p306,公民p59)
●侵略戦争を肯定・美化しています
アジア太平洋戦争を「大東亜戦争」とよび,「日本の緒戦の勝利は,東南アジアやインドの多くの人々に独立への夢と勇気を育んだ」として,アジア諸国の独立のきっかけとなった,アジア解放戦争だったと強調しています。「大東亜戦争」という用語は,アジア解放のための戦争という意味で使われたものであり,戦後の教科書では使われなかったものです。(歴史p276,p277)
●植民地支配を正当化しています
韓国は列強の脅威に対し十分対応できなかった,だから「日本の安全と満州の権益を防衛するために必要」だったなどと,韓国併合を正当化しています。しかも,併合後,鉄道・灌漑などで開発がすすんだと述べ,植民地支配が韓国にも「利益」をもたらしたように強調しています。朝鮮半島は「大陸から突きつけられている凶器」の記述は一部修正しましたが,西尾幹二会長と藤岡信勝理事の共著で,全国の教育委員に無料で送り付けた「国民の油断」には,これと全く同じ記述があります。検定でのこの部分の削除は間違いを正したものでないことは明らかです。(歴史p216,p240)
●戦争そのものを肯定し,子どもたちを再び戦場に送り出すことを狙う
「戦争には善悪はつけがたい」という記述は削除しましたが,「日露戦争は壮大な国民戦争」などと戦争そのものを肯定する考えは変わっていません。国定教科書の定番だった木口小平の「死んでもラッパを放さなかった」「美談」を載せ,日本の「捨石」にされた沖縄戦を「鉄血勤王隊の少年やひめゆり部隊の少女たちまでが勇敢に戦って」と描き,日本軍の玉砕や特攻隊を「お国のための死」と賛美するなど戦争を美化しています。21世紀は,核兵器を廃絶し,地球上から戦争をなくしていくのが人類の課題になっています。そのような国際社会の動向を無視して,子どもたちに戦争を肯定することを教える教科書の登場は驚きです。(歴史p196,p278,p279)
●「従軍慰安婦」や南京大虐殺などの加害を否定しています
「従軍慰安婦」にはふれず,南京大虐殺については,否定論を記述しています。一方,中国側の「南京でおこった外国人襲撃事件」については,詳しい記述がそのまま残っています。(歴史p264,p265)
●アジア蔑視で排外主義を煽っています
「眠り続けた中国・朝鮮」という小見出しは改めましたが,そのなかの本文は全く変わっていません。「近代日本が置かれた立場」や「近隣外交と国境画定」の項でも同様に,偏狭な民族主義を煽る一方で,他民族,特にアジアの諸民族への蔑視思想を宣伝しています。(歴史p174,p184,p185,p199)
●大日本帝国憲法と教育勅語を賛美,憲法,教育基本法の理念を否定
近代のアジア蔑視とはうらはらに,明治国家を高く評価しています。大日本帝国憲法を肯定的に描く半面,日本国憲法については否定的に描いています。また,教育勅語を全文掲載して「近代日本人の人格の背骨をなすもの」と賛美しています。このような憲法否定の教科書は戦後初めてであり,これは公教育において許されないものといえます。(歴史p214,p215)
●国家意識の強調と民衆の動きの軽視
とくに古代のところで国家意識の形成を強調し,近代では,国家への忠誠心(日露戦争の勝因は「日本人が自国のために献身する「国民」になっていたこと」)や国家主義が強調されています。その反面,民衆のくらしなどは,中正の土一揆までは記述がありません。自由民権運動も,政府側との共通面が一面的に強調され,そこに流れる民衆の願いは無視されています。アイヌ民族・琉球民族のおかれた状況についての記述もありません。(歴史p212,p218)
●国際緊張を強調し,軍備当然論,安保肯定論を一面的に強調
口絵ページの「国境と周辺有事」では,尖閣諸島に強行上陸した代議士の写真を掲載し,そのほか,阪神淡路大震災と自衛隊,国連の混乱と限界,大国日本の役割などのページで,国際緊張を課題に描き,いまの世界のなかでの軍事的対応の必要性,軍備の必要を説いています。(公民口絵p4,p6,p9)
●日本一女性が描かれていない教科書です
女性がほとんど登場せず,女性参政権や女子労働などにほとんど触れいていず(歴史),性別役割分担肯定,女性の特性としての家事労働の賞揚,憲法の男女平等原則解釈の歪曲(公民)など,たくさんの問題があります。わずかに津田梅子と与謝野晶子をコラムで扱っていますが,津田梅子が何より女性の自立を模索したことは全く書かず,与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」の詩は,「家や家族を重んじている」晶子が実家の跡取りの弟が戦死すると家の存続が危うくなることを案じたもので反戦詩ではない,としています。(公民p64,歴史p234,p235)
●基本的人権を軽視し,「国益」「国家秩序」「国防の義務」を強調
「国家利益」「国家秩序」を最優先し,それに反すると判断すれば基本的人権はいくらでも制限してよい,と主張しています。外国の憲法を引用して,日本国憲法には規定がなくても国民には「国防の義務」があるかのように強調しています。(公民p62,p73)
●核廃絶否定論を展開しています
「核廃絶は絶対の正義か」というコラムは,前半に核廃絶をめざすうごきについての記述が付け加えられましたが,後段にはもとの文章がそのまま残ったので,その部分が結論のような形になり,結局,核廃絶を否定する内容になっています。(公民p215)
●「つくる会」は「戦争のできる国」をめざしています
「つくる会」の教科書と運動は,戦争法(新ガイドライン関連法)にもとづく「戦争ができる国」「戦争をする国」づくりをめざすものです。この教科書は,教育基本法・憲法改悪のための地ならしでもあります。
●「やはり,ふさわしくない」
国際化がさらに進む次代を担う子どもたちには,事実を多角的に認識し,自分の頭で判断してほしい。その点で「つくる会」教科書は,なおバランスを書いている。教室で使うには,やはりふさわしくないと思う。/くり返し光を当てているのは,特攻隊員の遺書など,国家への献身だ。まず国家秩序ありきの考え方が色濃い。滅私奉公を美徳とするかのような社会観は,公民教科書にも貫かれている。/文部科学省が授業の基準とする学習指導要領にも書いているように,「広い視野にたって,多面的・多角的に考察し,国際社会に生きる民主的,平和的な国家・社会の形成者」を育てることこそ,大人に課せられた責任である。「自虐史観」の名の下に,戦争の加害などの負の部分を覆い隠そうとする。子どもをそんな温室に閉じこめたら,指導要領のめざす「国土と歴史に対する理解と愛情」もひよわな形でしか育つまい。そもそも,教材としての水準にも疑問なしとしない。「気韻生動」という美術を批評する言葉や,「「市民」が「公民」から分離する」などの言い回しは,大人でさえわかりにくい。中学生に理解しやすく伝える,という配慮に欠けている。/21世紀を切り開いていく子どもたちを育てる教科書だ。教育委員会まかせにせず,現場の先生はもちろん,親も,住民も関心を持ち,声をあげていく必要がある。(「朝日新聞」社説 4月4日)
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