高齢者に負担増健保法改悪案

患者の苦しみ聞こえないか

参院本会議、緒方議員が政府を追及 

2000年11月7日(火)「しんぶん赤旗」より


  お年寄りの医療費に一割の定率負担を導入するなど重い負担増を押し付ける健康保険法等改悪案と、病床べらしをねらう医療法改悪案は六日、審議の場を参院にうつし、参院本会議で質疑が行われました。日本共産党の緒方靖夫議員は徹底審議を求めるとともに、「相次ぐ医療費の負担増は国民の健康づくりにも逆行し、医療費の抑制にはつながらない」とのべ、「患者負担ではなく減らし続けた国庫負担を増やすことこそ必要だ」と迫りました。

  緒方氏は、介護保険に加えて医療費でも負担増を強いる改悪案について、「これでどうやって生きていけというのか」という入院中のお年寄りの声を紹介しながら、「こうした苦しみや悲鳴が届かないのか」と批判。重症の場合や所得の低い患者ほど受診抑制を招くものではないかと指摘しました。

  70歳未満の高額療養費の改悪についても、重病とたたかう患者と家族に重い負担を課すことは「行政による一種のペナルティーにほかならない」と強調しました。

  森首相は、介護保険料の徴収が「大きな混乱もなく実施されている」と現場の実態をまったく無視した答弁に終始。高齢者への一割負担導入については、「個々のケースでは負担が増加することもある」と認めながらも、「全体として負担は現行水準と変わらない」などと冷たい姿勢を示しました。

  緒方氏は、医療法改悪案に関連して、病院の精神病床について、患者6人に対して看護職員1人という劣悪な配置基準を定めている「精神科特例」が「日本の精神科医療をゆがめてきたことは明らかだ」と指摘。精神科医療費の改善とともに、特例の廃止に足を踏み出すべきだと迫りました。


健保法・医療法改悪案への

緒方参院議員の本会議質問

(大 要)

  日本共産党の緒方靖夫議員が6日の参院本会議でおこなった、健保法・医療法改悪案についての質問(大要)は次の通りです。

  はじめに、先日の与党三党による衆議院厚生委員会での強行採決に強く抗議し、本院での徹底審議を求めるものです。

 10月から65歳以上のお年寄りの介護保険料徴収が始まったことに、全国で苦情や怒りが広がっています。この負担に加え、定率制の導入で高齢者への医療費自己負担を強いるのが今回の「改正」案です。

  政府は「高齢者は豊かだ」などと強調しますが、高齢者の76%が住民税非課税で、4割を超えるお年寄りが月4万円台の年金で生活しているのが現状です。

  私は、東京都内の病院で患者さんと懇談し、「いったい、どこまで負担せよというのか」という怨嗟(えんさ)の叫びを聞きました。総理の耳には、こうした苦しみ、悲鳴は届いていないのですか。医療費の負担増が、お年寄りの厳しい生活にさらに打撃を与えるものにならないのか。

  改正案は70歳以上の患者負担に、原則として1割の定率負担を導入するものです。現在、お年寄りの医療費は定額負担です。定率負担が導入されれば、病院で検査や治療を受けても、医療費も、自己負担額も会計の窓口に行くまでわかりません。結局、重症の場合や所得の低い患者ほど診療を手控えざるをえず、診療抑制や中断を招き、お年寄りを病院から遠ざけることは必至ではありませんか。

  森首相は今回の定率負担について、「高齢者に無理のない範囲で現行制度とほぼ同じ水準の負担」であると答弁しています。しかし全国保険医団体連合会の試算によれば、現行の定額負担に比べると、通院・入院ともに平均で1.5倍の負担増となります。

  白内障手術は、かつて全額自己負担でしたが、大きな国民運動の成果で、92年4月から保険で安く受けられるようになりました。しかしこの費用も、8日間入院した場合、現行の約4倍の負担増になります。津島厚生大臣も審議のなかで、大幅な負担増になることを認めています。これでなぜ「現行制度とほぼ同じ水準の負担」などといえるのですか。

 さらに「改正」案は、70歳未満の高額療養費についても見直しを提案し、上限額に加えて、かかった医療費に応じた額の1%を加算する仕組みを提案しています。これは医療費が増えた分に応じて患者負担が無制限に増加する「歯止めなき負担増」になるということではありませんか。

 衆議院厚生委員会で参考人に立った連合の代表は、政府の「高額の医療給付を受ける人のコスト意識を高めるため」という言い分に強い怒りを表明しました。重症者に制限なしに高い医療費負担を課すことは、行政による一種のペナルティーにほかならないではありませんか。

 政府は、高齢者の医療費が急増し、「健保財政が危機であること」を制度改定の理由にあげています。しかし、健保財政悪化の大きな要因は、国の負担分をどんどん削ってきたことにあります。健保財政の危機というなら、患者負担を増やすのではなく、国庫負担を増やすことこそ求められているのではないですか。

 重大なのは、政府が今回の改定を「抜本改革の第一歩」と位置づけていることです。与党医療保険制度改革協議会が97年にまとめた「21世紀の国民医療」では、被用者保険の3割負担や大病院の外来5割負担を導入する案がうち出され、「改正」案は、まさにその「第一歩」としてもくろまれたものであり、廃案とすべきです。

 次に医療法「改正」案についてお聞きします。看護婦さんの労働条件は依然深刻です。それは看護婦さんの人数が圧倒的に少ないからです。しかし、今回の「改正」案は、病院のベッドを「一般病床」と「療養病床」に分け、療養病床を患者6人に対して看護婦1人という、世界に例をみない低水準の基準を法定化するものです。これでは、看護職員の労働条件の改善など到底図ることはできないではありませんか。

 現在、精神病床について、特例として、患者6人にたいして看護婦1人など、極めて劣悪な配置基準を定めています。こうした「精神科特例」が日本の精神科医療をゆがめてきたことは明らかであり、精神科医療費の改善とともに、精神科特例の廃止に足を踏み出すべきではありませんか。

 医療費の負担増は、医療費の抑制にはけっしてつながりません。税金の使い方を医療、福祉、介護など社会保障重視に転換することを強く求めます。